歌集 宇宙時刻
昭和期に活動していた謎多き口語自由律の歌人、小関茂。
彼が生前に遺した、諦念とニヒリズムに満ちた不思議な魅力を放つふたつの歌集をひとつにまとめて復刻。
栞(小冊子)付き、執筆者はphaさん、東直子さん、町田康さん。
【代表歌】
風が飛んでくる、風を裂いてゆけば、森の上のコンクリートタワー
自分がちっぽけにちっぽけになって歩いてるいちめんの麦の芽の中を
なんといふたのしさだ、なんといふさびしさだ、なんといふ長い橋だ
にんげんが原っぱの中から出てきたよ、みんなすゝき持ってこっち見たよ
こんなことが、こんなことが、生きていることだったんだ。こんなことが
笑った。むざんにも笑った。弁解しないために俺は笑った
俺は俺に唾を吐きかけた。だがやっぱり俺を抱きしめていた
俺はあぶなく茶碗をわるとこだったので、窓から茶をぶちまけた
ヨーヨーをやってみた。誰も満足に出来ないのでみんなそれで満足した
橋のむこうを見ていたが、そうだ、幾年も俺はふせぐことばかり考えてきた
ひとりでに頭を低れ、だれにとも知らず、ただゆるされたいとねがう
著者について
1908年2月12日、北海道旭川生まれ。1923年に上京し、職を転々とする。1929年「詩歌」に入り前田夕暮に師事。1931年に東京電機学校卒業。戦後は「人民短歌(新日本歌人)」や「地中海」の創刊に参加した。歌集に『小関茂歌集II』『小関茂歌集III』、小説に『大雪山』、そのほか科学小説・論説など多数執筆。1972年7月11日没。
出版社 : 点滅社 (2024/9/5)
発売日 : 2024/9/5
寸法 : 13.6 x 1.7 x 18.8 cm