差し出し方の教室
幅 允孝 (著)
あなたの想い、届いていますか?
その距離を越えるのは一匙(さじ)の慮(おもんぱか)り。
「人が本の場所に来ない時代」に「人がいる場所へ本を持っていく」仕事を積み重ねてきたブックディレクターが、選書以上に大切にしてきたこと――それは選んだ本をどう差し出すのかということ。そして、これまでに重ねてきた仕事から、同じ「もの」や「こと」でも差し出し方によって、相手への伝わり方が変わるということに気がつきました。
小売店舗で売られる商品も、ダンスフロアに流れる音楽も、観光地の名産品も、自らが愛してやまない「それ」を確かにそこにいる小さな一個人に向けて、「らしく」伝える方法に頭を悩ませる人は多いはず。コロナ禍で遠のいた人との距離にますますその想いを深めているのではないでしょうか? そこで、各界の差し出し手の元を訪ね、距離を越えて届けるためのヒントを探りました。さらに、これまでに著者が手掛けてきた仕事を振り返りながら、様々な場所での多様な本の差し出し方も紹介しています。
【目次】
第Ⅰ部 様々な「差し出し手」に会いに行く
◎1時間目 博物館での差し出し方
(東京国立博物館学芸企画部 上席研究員 木下史青さんの場合)
光の差し出し方/状況との出会い方/無意識に訴える
【対話の後で】
「空間」と「情報」の整理からものの伝達は始まる/「自由に見てね」の裏側にあるもの/
見る人の時間をいただく/遭遇ストーリー/気配をデザインする/
撮影したくなる風景はSNSのためだけではなく
◎2時間目 動物園での差し出し方
(日本パンダ保護協会 会長 土居利光さんの場合)
動物園の見方/人が動物を見ている時間は〇分?/ベストセラーとパンダ/大人のための動物園
【対話の後で】
「差し出し手」、「受け手」、「もの」/「自然に伝わる」という理想形/
体が心地よいと余白も生まれる/幻想の箱庭
◎3時間目 デジタル・コミュニケーションにおける情報の差し出し方
(アブストラクトエンジン 代表取締役 齋藤精一さんの場合)
Webの世界の差し出し方/ポストコロナ社会に求められるキュレーションの力/
デジタルとフィジカルの融合/デジタルと紙媒体
【対話の後で】
インターネットにおける3つの時間軸/ネットワーク社会でバランスを保つために/情報の使い分け/
どちらが主体者か?/インターネットと時間の奪い合い/共働する世界へ/
人は何を価値と考えるようになるのか?
◎4時間目 ワインバーでの差し出し方について聞いてみました
(「HIBANA」サービスマン 永島 農さんの場合)
「差し出し」はサービスである/「いってらっしゃい」と差し出す/場の結び目/
「コスパのいいワイン」って?
【対話の後で】
ワインの起源/ソムリエの誕生/産業化したワイン製造/
人間がコントロールしないワイン/居心地をつくる仕事
第Ⅱ部 BACHの仕事から見る差し出し方の多様
◎昼休み ブックディレクションとは何ですか?
◎5時間目 温泉町での本の差し出し方
(NPO法人 本と温泉)
「文学のまち」城崎の再生と『城崎裁判』/地産地消の本づくり/本とまちづくり
【対話の後で】
SNS全盛時代の観光とは/文学をコンテンツで終わらせないために/
まちでつくって、まちで売る/差し出す場所の身だしなみ
◎6時間目 病院における本の差し出し方
(さやのもとクリニック)
病院と本棚/ヴィジュアルブックの活かし方/育てる本棚
【対話の後で】
本を読むのもいいし、読まないのもいい/本を滑り込ませる/
病院という現場における本の可能性/セレンディピティについて/予感・徴候・余韻・索引
◎7時間目 子どもたちへの差し出し方
(丘の上保育園)
子どものための大人の本/本につながる/子どもと本
【対話の後で】
絵本から児童文学へ辿り着かない/頭のなかで像を描く/読書の測り方
著者について
幅 允孝(はば・よしたか)
BACH代表。ブックディレクター。1976年生まれ。人と本の距離を縮めるため、公共図書館や病院、学校、ホテル、オフィスなど様々な場所でライブラリーの制作をしている。安藤忠雄氏が設計・建築し、市に寄贈したこどものための図書文化施設「こども本の森 中之島」では、クリエイティブ・ディレクションを担当。最近の仕事として「早稲田大学 国際文学館(村上春樹ライブラリー)」での選書・配架、札幌市図書・情報館の立ち上げや、ロンドン・サンパウロ・ロサンゼルスのJAPAN HOUSEなど(2022年12月現在)
出版社 : 弘文堂
発売日 : 2023/1/23
言語 : 日本語
単行本 : 336ページ