短篇集 ヘンルーダ
松岡千恵(著)
女の子たちを描いた、生々しくて、美しくて、はかない世界。
著者の松岡千恵さんは丸善ジュンク堂書店に勤めています。同店のPR誌「書標」に評
論を寄せられたことはありますが、岬書店より今回刊行するのは短篇集です。丸善ジュ
ンク堂書店と思われる書店を舞台にした「備品奇譚集」や、四人の姉妹の不思議な関係
を描く「レーテー」、女の子たちの友情を描く傑作「ヘンルーダ」など、5編を収録し
ます。間違いなく現実の身近な世界を描いているだけれど、どこかたよりなく、いつも
現実ではないものが映り込む松岡さんの世界は唯一のものです。
「昔から年寄りがよく言う、ある存在。一日の始まりと終わりに繰り返し見つめるもの。
年が替わる澄んだ空気の朝や、もしくはむせかえるような夏の宵、桜が散りゆく雨の午
後にひときわ、香り立つもの。「守り神」と呼ばれたものについて考えるとき、なぜだ
か彼女の姿が私の頭に、思い浮かぶのだ。」
松岡さんの小説を読んでいると、そのたびに驚きがあり、小説っていいな、と思います。
装画、挿絵は山口法子さん。「私は書店員としての松岡さんに全幅の信頼を置いている
が、知人としては相変わらず「謎」の人であり、更に今後はそこに『変な物語を書くひ
と」という新たな属性(?)が加わった。」と巻末に解説を寄せてくださったのは佐々
木敦さん。「チリなし上製本」という珍しい仕様で、持っていてうれしくなる1冊です。
夏葉社
176頁(四六版変形/上製)