パトリックと本を読む:絶望から立ち上がるための読書会

ミシェル・クオ (著), 神田 由布子 (翻訳)

人生と社会のどん底から抜け出すための読書会

罪を犯したかつての教え子を救うために何ができるか。読書の喜びを通して、貧困からくる悪循環にあえぐ青年の心に寄り添った法律家の記録。

ハーバード大学を卒業した著者は、ロースクールへ進む前に、アメリカ南部の最貧地域の町で2年間、ボランティアの教師となることを決める。だが、劣悪な環境で育った黒人の生徒たちに読書を通じて学ぶ楽しさを教え、誇りを持たせたいという著者の理想は、最初からつまずく。読書以前に、生徒たちの読み書き能力は年齢よりはるかに劣っていたのだ。自治体に予算がなく人々に職のない小さな町で、生徒は将来を思い描けず、学校は生徒を罰することしか考えていない。それでも著者の奮闘の甲斐あって生徒たちは本に親しみはじめるが、当局の方針によって学校が廃校になってしまう。
ロースクールへ進んだ著者はある日、もっとも才能のあった教え子、パトリックが人を殺したという知らせを受ける。数年ぶりの彼は読み書きもおぼつかず、自分が犯した過ちに比べて重すぎる罪に問われていることが理解できていなかった。かつての聡明さを失った姿に衝撃を受けた著者は、拘置所を訪ねてともに本を読むことで、貧困からくる悪循環にあえぐ青年の心に寄り添おうとする。同時にそれは、ひとりの教師・法学生の自己発見と他者理解をめぐる、感動的な記録ともなった。

[目次]
序章

第一部
第1章 ア・レーズン・イン・ザ・サン
第2章 自由に書いてみる
第3章 次は火だ

第二部
第4章 イワン・イリイチの死

第三部
第5章 罪と罰
第6章 ライオンと魔女と衣装だんす
第7章 天の衣を求める
第8章 フレデリック・ダグラス自叙伝

第9章 有罪の答弁
第10章 晩春のポーラに

第四部
第11章 イースターの朝

参考文献
謝辞
訳者あとがき

著者について
ミシガン州生まれの台湾系アメリカ人。ハーバード大学卒業後、アーカンソー・デルタのオルタナティブ・スクールで二年間、英語を教える。ポール・アンド・デイジー・ソロス研究奨励金授与財団フェローとしてハーバード・ロースクールに進学、カリフォルニア州オークランドのNPOで移民のために法的支援の仕事につく。第九巡回区連邦控訴裁判所での法修習生の経験をへて、現在はアメリカン・ユニヴァーシティ・オブ・パリスで人種・移民問題や法律を教えている。本書が初の著作。

出版社 ‏ : ‎ 白水社
発売日 ‏ : ‎ 2020/5/8
言語 ‏ : ‎ 日本語
単行本(ソフトカバー) ‏ : ‎ 393ページ

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