オーセンティックな算数の学び

小野 健太郎 (著)

現実と数学の世界を自由に行き来する学びへ

■本書の概要■
長年、学びを問い直す鍵として語られてきた「オーセンティック(真正な/本物の)」概念。その歴史的な流れを振り返り、算数教育の領域に丁寧に位置付けることを試みる。大学で教員養成に携わる傍ら、小学校での実践を続けるハイブリッドな研究者による第一作

■本書からわかること■
□内容
長年、学びを問い直す鍵として語られてきた「オーセンティック」概念。「オーセンティック」とは、「真正な」や「本物の」という意味を表す形容詞で、近年、「オーセンティック・ラーニング」や「真正な学び」といった言葉遣いで、しばしば教育の文脈に登場します。本書では、「オーセンティック」が、どのような経緯で教育の文脈に登場してきた概念であり、なぜオーセンティック概念に着目することで、子どもたちが学ぶ価値を実感できるような授業が構想可能なのか、明らかにしてきます。

■算数のフィクションとノンフィクション■
とりわけ、本書では「小学校算数」を扱います。誰しも身に覚えがあるように、馴染むことができた人・できなかった人、受け入れられた人・受け入れられなかった人に大きく分かれがちな算数という教科。ここには、どういう理由があるのでしょうか。本書では、その回答として「算数のフィ クションとノンフィクション」という切り口を提案します。私たちが、算数固有のフィクションに馴染めずにモヤモヤを抱えてきたのだとすれば、ノンフィクションから始まる算数の授業構想は可能なのか。あるいは算数固有のフィクションの価値とは何であるのか。このことを見つめ直し、学びの在り方を再構築することが、質の高い算数科の学力の形成、ひいては未曾有の社会の変化を生き抜くこれからの子どもたちの学ぶ力の形成に寄与するものであると著者は言います。

■理論と実践をつなぐ真摯な第一作■
著者は、武蔵野大学教育学部教育学科の小野健太郎准教授。11年間小学校教諭として勤めた後、教科教育(主に算数)の実践研究を教育心理学的視点から進め、教員養成に携わっています。また、並行して現在も小学校での実践研究を進めており、本書では、オーセンティシティーを高めた学びを実現したご自身の具体的実践を紹介しており、理論と実践が往還する意欲的第一作となりました。

≫上智大学教授 奈須正裕先生よりコメント
リアルな生活現実の先に見えてくる価値ある虚構。 算数ってそういう教科だったんだ。これなら断然面白い。

≫島根県立大学教授 齊藤一弥先生よりコメント
「子どもの数学的な見方・考え方」を引き出し、 それを最大限活かした教科の本質を追究する学びの描き方を提案。

■こんな人におすすめ■
子どもたちが、学んでいる意義を実感できるような算数の授業をしたい先生方。「オーセンティック」概念を、一から学びたい先生方。


目次
第1章 算数の「フィクション」と「ノンフィクション」
算数の「フィクション」 010
ドラマのワンシーンから/算数の「フィクション」にまつわる問い
算数の「フィクション」と「ノンフィクション」 017
「問題づくり」に現れる二つの様相/にんじんのカシワさん/シチューのサトウさん/「フィクション」と「ノンフィクション」の望ましさ/「問い」の捉え方/「フィクション」の数学の世界と「ノンフィクション」の現実の世界
「フィクション」から始まる算数 037
「ノンフィクション」と「オーセンティック」の関係/なぜ算数の「フィクション」に馴染んできたのか・馴染めなかったのか/教科書の成立過程と「フィクション」/教科書のコンテンツの配列と「フィクション」/コンテンツ・ベイスの教育観/コンピテンシー・ベイスの教育観/コンテンツ・ベイスの教育観と「フィクション」の相性のよさ
オーセンティックな学びとは何か 065
オーセンティックのそもそも/オーセンティックな評価と「逆向き設計」/「オーセンティックな学び」の広がり/オーセンティックな文脈を考える/解像度が上がるノンフィクション
第2章 オーセンティックな算数の学び
現実の世界を生きる課題 082
現実の世界のオーセンティックな文脈とは何か/教科書をベースにして現実の世界の文脈を回復する/それって本当に現実の世界のオーセンティックな文脈?/オーセンティシティとは何か/子どもにとってのリアリティ/オーセンティックは「目をキラキラ」させるため?/現実の世界のオーセンティックな文脈を回復させるポイント
数学の世界とは何か 100
算数ではなく数学/算数と数学はどこが違うの?/数学的活動との関連/数学はフィクションである/数学の世界がフィクションだからこそできること/小数のわり算でパターンを優先してみる
現実と数学の世界を行き来する 120
フィクションのお約束/数学の世界への入口を自分で見つける/オーセンティックな課題の副産物/数学の世界からの出口を自分で決める/算数の問題はアンタッチャブル?
数学の世界に身を置く 147
数学の世界に身を馴染ませる/将棋的な見方・考え方/数学の世界に固有のアプローチ/数学の世界のアプローチとしての「分割」/「分割」の条件節/「分割」の探究/子どもが教材研究する学び
第3章 オーセンティックな算数の授業
包括的なスケジュールを立てる「時刻と時間」 170
包括的なスケジューリング/「本当の小学校3年生」なんていない/教科等横断への広がり/算数科のコンテンツはいつ学ぶのか?/コンテンツを教えてからオーセンティックな課題で知識を活用/文脈に埋め込まれたコンテンツの明示化
リアルな交通量調査を考察する「表と棒グラフ1」 194
リアルな教材と出合うスタート/算数科のコンテンツにつながる視点へ焦点化/リアルな教材から生じた三つの困りごと/有意味なゴールの設定/ゴールから逆算した調査項目の決定/リアルな場面から生まれるコンテンツを学ぶ必然性
有意味なゴールに応じてグラフに表す「表と棒グラフ2」 214
棒グラフを「工夫」してかく/学びの「文脈」とは何か?/単元を一貫させたオーセンティックな文脈/他教科における学びの「文脈」/有意味なゴールを設定して文脈を一貫させる/教科書は参考書/コンテンツの共有/本当の「工夫」/「有意味なゴール」のオーセンティシティ/教科書の単元導入場面のアレンジ/他教科等や子どもの暮らしからの関連を見いだす
数学的な課題を現実の文脈に乗せる「分数のわり算」 239
「商の解釈」というオーセンティックな課題/数学の世界のオーセンティックな課題への抵抗/「数学の事象」と「算数の学習場面」/「数学の事象」にノンフィクション風の設定をかぶせる/ノンフィクション風の設定をかぶせる功罪/「算数の学習場面」との付き合い方/フィクションの共通了解を得る/ノンフィクションから見いだす「算数の学習場面」/ノンフィクションの学習場面が抱える複雑な情報/ノンフィクションの場面から学習問題へ/数学の世界の学習問題の追究/現実の世界に広がる学習場面/ハイブリッドなアプローチの留意点と広がり/社会との関わりを追究する/既習事項(算数)との関わりを広げる
第4章 オーセンティック再考
オーセンティックな学びの効能 290
既有知識の活性化/転移可能な学力の形成/エピステミックな知識の獲得
オーセンティック再考 298
「子ども」扱いの学びへの異議申し立て/「大人」とは、どんな人だろう/本当に「現実の世界のオーセンティック」はいいもの?/「いつ」の社会と同型なオーセンティックな文脈か?/オーセンティックな学びは一期一会/「どこ」の「だれ」にとっての社会と同型なオーセンティックな文脈か?/本当に「数学の世界のオーセンティック」はいいもの?/あなたにとってその「数学の知」は必要か?
注釈 317
引用・参考文献 330
おわりに

著者について
武蔵野大学教育学部教育学科准教授
東京学芸大学大学院教育学研究科学校心理専攻修士課程修了。明星学園小学校教諭、東京学芸大学附属小金井小学校教諭、東京学芸大学教育学部非常勤講師、武蔵野大学講師などを経て、2021 年4 月から現職。教科教育(主に算数)の実践研究を教育心理学的視点から進め、教員養成に携わる。また、並行して小学校での実践研究も進める。武蔵野市立第二小学校 武蔵野市開かれた学校づくり協議会委員、日本特別活動学会実践研究支援委員会委員、学校図書小学校算数科教科書編集協力者。電気通信大学情報理工学域非常勤講師。分担執筆に、『シリーズ新しい学びの潮流3 子どものくらしを支える教師と子どもの関係づくり』(ぎょうせい)、『教科の本質を見据えたコンピテンシー・ベイスの授業づくりガイドブック』(明治図書出版)、『ポスト・コロナショックの授業づくり』(東洋館出版社)など。研究論文に、「算数科の問題解決型授業の課題と今後の展望―オーセンティック概念に基づく授業開発モデルの可能性の検討―」「オーセンティック概念に基づく統計授業の実践研究―能力観への影響に着目して―」「RME 理論に焦点をあてた研究の動向と展望」など。

出版社 ‏ : ‎ 東洋館出版社
発売日 ‏ : ‎ 2022/7/28
言語 ‏ : ‎ 日本語

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