日本異界図典
朝里樹 (監修)
私たちが生きる世界の向こう側にある見えない世界「異界」――。いにしえの人々は、人知を越えた存在を畏れ敬い、異界という世界を創り上げた。人々が異界を通し築き上げた文化や伝統、社会を解説していく。神社に張り巡らされた結界とは? 「かごめかごめ」は呪術だった? 北東は鬼の通り道だった? 相撲の作法は魔除けの儀式だった? いにしえから伝わる民俗信仰や、歴史の観点から「異界」を紐解く。
はじめに
異界という言葉から、 あなたは何を思い浮かべますか?
人は自分たちが住む世界と、その向こう側の世界を分けて生活してきました。 その境目に当たるのが「境界」であり、 境界の向こう側に広がるのが「異界」です。 自分たちの生きる世界の外側は、 どんな存在や出来事があってもおかしくない 「異界」 として認識されたのです。 そして、わたしたちは古代より、その見えない世界をたえず想像し、恐れ敬い、「異界」を創りあげました。
たとえば、鬼や河童、天狗などの妖怪は、私たちが創造した異界の住人です。現代では妖怪はキャラクター化され馴染みのある存在ですが、鬼や妖怪は人々の恐れから生み出されたものでした。他にも、日本には人々が想像した「異界」から生まれた文化が数多く存在します。
本書では、 異界という幅広い世界を 「空間」「モノと暮らし」「行事」 「芸能」 の4つのカテゴリに分けました。第1章の「空間」では、神社などの俗界に存在する異界的な場所や、時間や方角に潜む怪異的な概念を解説します。2章の「モノと暮らし」は、習俗や禁忌など異界と関わりのある文化を解説します。3章の「行事」では、年中行事から人々が異界とどう向き合ってきたのかを解説します。4章「芸能」では、能楽などの古典芸能にみられる異界から生まれた概念やしきたりを解説していきます。
日本全国の伝統や民俗の多様さを考えると、本書で異界のすべてを紹介することは不可能ですが、 読み進めるうちに異界の概念が少しずつわかってくるはずです。 日本の神秘的な光景を目にしたとき、その基本的なルーツを知っておくことで、古から続く伝統と歴史の重みを感じられることでしょう。 あなたが異界へ近づくための入門書として手に取っていただければ幸いです。
著者について
朝里 樹(あさざと いつき) 怪異妖怪愛好家・作家。1990 年、北海道に生まれる。2014 年、法政大学文学部卒業。日本文学専攻。現在公務員として働く傍ら、在野で怪異・妖怪の収集・研究を行う。著書に『日本現代怪異事典』『世界現代怪異事典』(笠間書院)、『日本のおかしな現代妖怪図鑑』(幻冬舎)がある。
出版社 : ジー・ビー
発売日 : 2021/1/15
言語 : 日本語
単行本(ソフトカバー) : 192ページ