あなたのためになっていますか 暮らしの中にある「看護」を見つめ直して
児玉善子 (著)
和歌山のみかん農家に生まれた著者は、ちょっとしたきっかけから看護の道に進みました。看護師として、また指導者としてさまざまな現場で体験したことや看護教育のサポートをするために独立起業した経験を通し、ユニークな視点で語られる62の掌編。医療の現場に興味のある人にも、これから看護の現場に出る学生にも、自分自身のこれからのあり方に悩んでいる人にもヒントを与えてくれる一冊です。
目次
第1章 私の暮らしと看護
私の生い立ちと「暮らしの中の看護」
行ってしまった魂は帰らない
生きざまと死に際
人生に影響を与えた「母」のことば
テトラサイクリン菌とコンプレックス
振り切るまで好きなことをやらせてあげたい
私、母親卒業宣言しました
父の看取りは、介護からの解放だった
いつの間にか「皮膚むしり症」を乗り越えていた
私が「カエル好き女子」である理由
第2章 私の「看護」
私が看護師の道を歩み続けた理由
精神科の男子閉鎖病棟での実習は忘れられない
実母を病理解剖した医学生
はじめて文字盤を使った日の実習
新人看護師、女子閉鎖病棟で働く!
長谷川さんが最期に会いたかった人妻
天使たちの「粋な計らい」
看護師さん、俺の話を聞け!
いつからでもスタートラインに立つと決める
沈黙から伝わるメッセージ
ゲートキーパーのいない医療
ルーティンワークを研ぎ澄ます
手術の前に言いたかったこと
成人女性のおむつとトラウマ
お母さん、最後の運動会に行く!
夢をかなえた中年夫婦の向かう先
あのとき、死ななくてよかったと颯爽と言いたい
幸せになる資格を取得する条件
野球ができなくなった青木くん
履きたいズボンと履きやすいズボン
「ここじゃない!」という直感に従った老人
愛犬よりも先に死ぬとき
天使が庭に舞い降りるとき
看護師は、笑顔じゃなきゃだめなのか
15年後にプロポーズすることを決めた男の物語
第3章 看護教員の仕事
看護教員の道を選んだ理由
3人だけの秘密が教えてくれたうつからの回復
精神障害者が集う場で理由もなく涙が出そうになる私
つつましやかに自分の席に着く
「ボールを思いっきり投げたい」の本当の意味
私が認知症になっても多少の脚色は許容してください
小さな棺に入った赤ちゃん
ほどほどとは、ほどほどでないことを知っている
対話をする中華料理店の回転テーブル
細かなことが気になる性分とともに生きる
手術後の歩行前に聞いてみたお腹の音
第4章 看護教育支援起業家として
私が看護教育支援で起業した理由
劣等感が結核の石灰化巣陰影のように残っている
オンライン実習は施設の遠隔レクリエーション
先生の話にはオチがない
「お母さんは元気、息子は病気」の二人暮らし
子どもがお兄ちゃん先生の靴を履いて確かめたかったこと
コロナ禍、たった一人で過ごした寡黙な人
あなたにはお礼しかありません。「ありがとうございました」
私の中の「しずこ」
「当り前じゃない」を知っている
大自然の中で働くキャンプナース
サイレントすぎてその変化に気づいてない
EPA介護福祉士候補者さんに伝えられない、sayとspeakとtellとteachの使い分け
せっかく日本に来てくれたのなら美しい日本語を覚えてもらいたい
「死んでしまう」と感じた瞬間から
ビジョンは過去にある
著者について
1968年 和歌山県有田市生まれ。
1990年 国立泉北病院附属看護専門学校卒業後、病院で看護師として働きはじめる。精神科病棟、筋ジストロフィー病棟、整形外科病棟、手術室などで勤務。
2001年 厚生労働省認定看護教員養成講習会を修了。
同時期、看護師として働きながら、患者さんの人生に向き合う看護師である前に一人の人間としての教養のなさ、視野の狭さに悩んだ。何かを学び直さなければならないという焦燥感から2002年佛教大学通信課程文学部国文学科卒業(文学学士)。学位論文は、「漱石の『門』における罪と罰」。方丈記や源氏物語は高校生の時よりも理解できた。
2003年 看護専門学校の教員となるが、教えるという立場になると一層、人間としての生き方、存在そのものに葛藤を抱くようになる。教員をしながら2008年日本大学大学院総合社会情報研究科修了(人間科学修士)。修士論文は、「人間的自己形成における相互承認」。そのときに出会った分野のまったく違う職業の人たちと学び直しを共にできたことは何よりも財産になった。
2008年 一旦看護専門学校を辞職し、3年間病院で看護師として働く。
2010年 父を20年間の介護の末、自宅で看取った。その経験が暮らしの中の看護について再考する契機となる。
2011年より、再度、看護専門学校の教員として7年間働いたのち、2018年、一般社団法人看護教育支援協会を設立し、代表理事として現在に至る。
看護師、看護教員、看護教育起業家として、常々、劣等感と不甲斐なさに苦しんだ道のりだった。現在、夢中になってやっていることは、絵を描くこと。これからも夢中で描こうと思っている。「え? 看護は? 教育は?」と思われるかもしれないが、結論で言えば、自分が楽しいと思うことをやることが健康的であり、自分を輝かせるという意味において教育であると考えている。
出版社 : 出版館ブック・クラブ (2023/11/30)
発売日 : 2023/11/30
単行本(ソフトカバー) : 240ページ
寸法 : 1.5 x 12.8 x 18.8 cm