私の1968年
鈴木道彦 (著)
羽田闘争、ベ平連と脱走兵、金嬉老事件……政治暴力が猛威をふるうなか、東京で支援活動を繰り広げた後、パリに渡るやすぐさま五月革命に遭遇! 激動の時代に立ち会ったフランス文学者が、人間社会の矛盾が軋みをあげる現場に踏みとどまり、自らの思想に試練を課す。 ──“抵抗の暴力"が引き受けざるをえない挫折の向こうに、わずかな光明を見出さんとする精神の軌跡を収録する。「暴力と挫折の弁証法」の思想が、50年を経て再びその相貌を現す。時代を貫く〈抵抗の評論〉集。
出版社からのコメント
1968年前後に発表された評論を一巻に収録。前年の羽田闘争にはじまり、金嬉老事件やパリに渡っての五月革命など、「68年」に起こった事件をめぐり執筆された文章を集めました。巻頭には書き下ろしの「私の1968年」を付しています。 プルーストの個人訳で名高い著者ですが、社会・政治的な評論のみを集約してみますと、あらためてその思想が浮き彫りになるのがわかります。「被抑圧者の暴力はつねに抑圧者の暴力でつくられたものであって、しかもなお暴力である以上、つねに挫折の契機をはらみ、またそれをはらみながらも、つねに挫折をのりこえてゆく可能性をもふくむものである」(本書より)とあるように、抵抗の暴力が避けることのできない挫折を見据え、その向こうに光明を見出そうとする著者の姿勢は、古びるどころか、今なお挑まねばならない課題として残されています。“暴力と挫折の弁証法”の思想が50年の時を貫いて問いかけてくるものを、多くの方が受けとめ、考えてくださることを願ってやみません。
著者について
鈴木道彦(すずき・みちひこ) 1929年東京生まれ。1953年東京大学文学部卒業。フランス文学専攻。著書『サルトルの文学』(紀伊國屋書店、1963、精選復刻版、1994)、『アンガージュマンの思想』(晶文社、1969)、『政治暴力と想像力』(現代評論社、1970)、『プルースト論考』(筑摩書房、1985)、『異郷の季節』(みすず書房、1986、新装版、2007)、『越境の時』(集英社、2007)、『マルセル・プルーストの誕生─新編プルースト論考』(藤原書店、2013)、『フランス文学者の誕生 マラルメへの旅』(筑摩書房、2014)、『余白の声 文学・サルトル・在日─鈴木道彦講演集』(閏月社、2018)ほか。訳書にファノン『地に呪われたる者』(共訳、みすず書房、1968)、ニザン『陰謀』(晶文社、1971)、サルトル『嘔吐』(人文書院、2010)、『家の馬鹿息子』1、2、3、4(共訳、人文書院、1982、1989、2006、2015)、プルースト『失われた時を求めて』全13巻(集英社、1996〜2001)ほか。
出版社 : 閏月社; 初版
発売日 : 2018/10/10
言語 : 日本語
単行本 : 368ページ