じぶん・この不思議な存在 (講談社現代新書)
鷲田 清一 (著)
●探せばどこかにじぶんはある? ●女の子は「女装」によって女になる ●過敏になったじぶんの先端 ●小さな不幸がひきたて幸福 ●アイデンティティの衣替え ●わたしはだれにとっての他者か ●他者のなかに位置を占めていない不安 ●泳ぐ視線、のぞく視線、折れ曲がる視線 ●他人の視線を飾る行為 ●じぶんがぼやけることの心地よさ
わたしってだれ? じぶんってなに? じぶん固有のものをじぶんの内に求めることを疑い、他者との関係のなかにじぶんの姿を探る。
探せばどこかにじぶんはある?――「じぶんらしく」なりたい、じぶんとはいったいどういう存在なのかを確認したいと思って、じぶんのなかを探す。顔がいい? 走りが速い? 計算が速くて正確? 明るい? ……どれをとってもわたしだけに固有のものってありはしない。このような性質や能力はだれもが多かれ少かれもっているものだ。性別や年齢や国籍などというのは、それこそみんながもっている。だから、その1つ1つはだれもがもっているものであるにしても、それらの組み合わせにひとりひとり独自のものがあるのだ、というのは、そのときだれもが思いつく論理である。が、これがじぶんというものの、かけがえのない不二の存在を証しているなどというには、あまりにも貧弱な論理であるのは、だれもが直観的に気づいている。――本書より
著者について
1949年生まれ。京都大学文学部卒業。同大学院博士課程修了。現在、大阪大学文学部教授。哲学・論理学専攻。著書に『分散する理性』―勁草書房、『モードの迷宮』―ちくま学芸文庫、『見られることの権利・〈顔〉論』―メタローグ、『ちぐはぐな身体』―筑摩書房―などがある。
出版社 : 講談社
発売日 : 1996/7/19
言語 : 日本語
新書 : 180ページ
寸法 : 10.6 x 0.9 x 17.4 cm