写真歌集『春、花に問う』
田中ましろ個人による写真歌集第4弾。
大切な人を喪った主体の心を詠う46首連作に撮り下ろしの写真を添えて透明感のある世界を作り上げました。
**収録作品例**
宛先の書けなくなった便箋に膨らんでいく春の約束
どことなく淋しい(それは重症で)自分の影も憎んでしまう
病棟のやけに明るい階段で愛をあなたに伝えそびれた
花嫁のわたしを見せにきたのだと水平線に頼むことづて
潮騒よ わたしがわたしを遠くから眺めるような毎日なんだ
踊りつづけるよ 終着地が無くて旅をつづけるしかない道化
永遠と思えたものの危うさよ 波はわたしの足に崩れる
この出会いはいつか神話になるほどの奇跡だったとラジオは言った
波音に間違いも正解もなく押し寄せてくる空虚ばかりが
指先がまだ覚えてる生ぬるい今際の際のなみだの温度
待たせたねって言ってあげたいくらいには死にたい春の陽気のなかで
電車の窓を流れるひかりひかりひかりどの日常も対岸にある
死はきれいですか そちらは雨ですか こちらの空は泣いてくれない
***
A5変形(正方形)の中綴じ冊子。
56ページ。フルカラー。
特設サイト
http://www.kokoiru.com/haruhana/
短歌・写真:田中ましろ
出演:TOKO
田中ましろ|短歌と写真 @tnkmsr
現代歌人・コピーライター・写真家。写真×短歌のフリーペーパー「うたらば」@utalover を作っています。写真と短歌の人でありたい。第一歌集『かたすみさがし』、写真歌集『ストレイシープ』、『燈心草を香らせて』など。
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「うたらば」は短歌×写真のフリーペーパーです。
短歌を知らない人に、短歌の面白さを届ける
フリーペーパー「うたらば」の最新号です。
テーマは【色彩】。
写真と短歌を組み合わせた作品のほか、作品鑑賞のページも。
短歌に触れて、その魅力を堪能する最初の一冊にぜひご活用ください。
<写真作品掲載歌人>
丸瀬まる / 友常甘酢 / 大橋奥文 / 中村 杏 / 葉月ままこ /芍薬 / 泰源 /
風花 雫 / 石川真琴 / ナカムラロボ / 星野珠青 /