ぼくがゆびをぱちんとならして、きみがおとなになるまえの詩集 (福音館創作童話シリーズ)
斉藤 倫 (著), 高野 文子 (イラスト)
きみはいつものように、あけっぱなしの玄関から、どんどんぼくの部屋にあがりこんできた。ランドセルをおろして、きみはいった。「ねえねえ」「なんだあ」「せんせいが、おまえは本を読めっていうんだ。ことばがなってないから」。ぼくは立ち上がってとなりの部屋に行き、本だなから一冊の詩集をとってきた。そして、ページをひらいて、きみに手渡す。「ここんとこ、読んでみな」。詩はむずかしい。詩は意味がよくわからない。だから、詩はおもしろくない。確かに詩はむずかしくて、よくわからないものかもしれない。でも、詩はおもしろくて、ほんとうにたのしくて、そして自由だ。詩は、ことばを自由にし、ことばによって縛られ、不自由になっているわたしたちに、ことばは、わたしたちを縛るのではなくて、わたしたちは、ことばによって自由になれるのだと教えてくれる。20篇の詩を通して、詩人斉藤倫と楽しみ、そして考える、詩のことそしてことばのこと。
作品の中に登場する詩
1.「あの」藤富保男/「か」藤富保男 2.「うしろで何か」松井啓子/「じゃがいものそうだん」石原吉郎 3.「まつおかさんの家」辻征夫/「人生が1時間だとしたら」高階杞一 4.「きりん」まど・みちお/「やくぢやま節」 5.「痛点まで」松岡政則/「ユウレイノウタ」入沢康夫 6.「ねむり」山崎るり子/「猫」萩原朔太郎 7.「海をみにゆこう」長田弘/「ナチュラル・ミネラル・ウォーター」田中庸介 8.「真夜中の蟬」中野重治/「誰かが言ったに違いない」村上昭夫 9.「『句集 無伴奏』より」岡田幸生/「崖」石垣りん 10.「大漁」金子みすゞ/「風がやむとき」井上洋子
著者について
斉藤倫
1969年生まれ。詩人。2004年『手をふる 手をふる』(あざみ書房)でデビュー。14年『どろぼうのどろぼん』(福音館書店)で長篇デビュー。同作で、第48回児童文学者協会新人賞、第64回小学館児童出版文化賞を受賞。おもな作品に『せなか町から、ずっと』『クリスマスがちかづくと』(以上福音館書店)、『波うちぎわのシアン』(偕成社)、絵本『とうだい』(絵 小池アミイゴ/福音館書店)、『えのないえほん』(絵 植田真/講談社)詩集『さよなら、柩』(思潮社)、がある。また、『えーえんとくちから 笹井宏之作品集』(PARCO出版)に編集委員として関わる。
高野文子
1957年生まれ。漫画家。 看護師学校在学中に、同人誌へ漫画の発表を始める。 1982年に漫画家協会優秀賞、 2003年に手塚治虫文化賞を受賞。おもな作品に、作品集『絶対安全剃刀』(白泉社)、『るきさん』(筑摩書房) 、『棒がいっぽん』(マガジンハウス) 、『黄色い本 ジャック・チボーという名の友人』(講談社) 、『ドミトリーともきんす』(中央公論新社)、絵本『しきぶとんさん かけぶとんさん まくらさん』(福音館書店)などがある。
出版社 : 福音館書店
発売日 : 2019/4/10
言語 : 日本語
単行本 : 160ページ