【本と羊のイチ推し】死ぬまで生きる日記
「死にたい」という言葉を口にしたり、常に考えているような日々を送っている方がいれば、この本を読んで自分の状況と比べてみて、少しでも希望の光が見えることを願います。あなた一人だけではない「死にたい」という苦しさをかかえる誰かの心に寄り添いたくて選んだ一冊です。
著者の土門蘭さんは小説、短歌、エッセイなどの文芸作品や、インタビュー記事を書いている方で、子どもの頃から抱えている「死にたい」という気持ちに長年悩まされ、心療内科でうつ病と診断されました。治療の末、一度は症状が軽減しましたが、結婚や育児、執筆の忙しい生活の中ではうつ病は完全に消えることはありませんでした。再受診しましたが、家族に相談の上、薬での治療をしないことを決め、2020年の春に心理カウンセリングをオンラインで受診することにしました。
そこで心理カウンセラーの本田さん(仮名)という女性と出会います。この本では彼女との2年間の心理カウンセリングのやりとりを通して、土門さんの心がどう変化していくかが綴られています。「日記」と書かれてはいますが日付はありません。これは日々が流れる中で2週間に一度、画面越しに出会う二人の対話の記録です。
「死にたい」という気持ちの根底にある原因は何なのか?どう対処して自分に向き合えばいいのか。本田さんの言葉や日々の療法を通して、第三者に読まれることを分かっているとはいえ、自分をさらけ出し、細かな気持ちの変化を正直に臆することなく書ききる蘭さんの文章に心が震えました。
皆さんの道のりはこれから長くて険しいです。何度も挫折感を味わうこともあるでしょう。でもそれを乗り越えていって欲しい。「死にたい」なんて考えずに生きていってください。生きていれば「希望」はあるのです。人生は一度。
死にたくなくても必ず死にます。存分に「生」を楽しんでください。(店主より)
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土門蘭 (著)
日常生活はほとんど支障なく送れる。「楽しい」や「嬉しい」、「おもしろい」といった感情もちゃんと味わえる。それなのに、ほぼ毎日「死にたい」と思うのはなぜだろう? カウンセラーや周囲との対話を通して、ままならない自己を掘り進めた約2年間の記録。
著者について
1985年広島県生まれ。小説・短歌などの文芸作品や、インタビュー記事の執筆を行う。著書に歌画集『100年後あなたもわたしもいない日に』(寺田マユミとの共著)、インタビュー集『経営者の孤独。』、小説『戦争と五人の女』、エッセイ『そもそも交換日記』(桜林直子との共著)がある。
出版社 : 生きのびるブックス
発売日 : 2023/4/20
言語 : 日本語
単行本 : 264ページ
「死ぬまで生きる日記」のレビュー・評価を要約してみました。
ご参考になればと思います
◉共感と自己理解
理由なく「死にたい」と感じる、楽しいことがあっても希死念慮が訪れる経験を持つ読者から、共感の声が多数寄せられている。
著者(土門蘭さん)のカウンセリングを通した自己理解の過程が、読者自身の自己理解を促すきっかけになっている。
◉カウンセリングの疑似体験
カウンセラーとの対話を通して内面を深く掘り下げていく内容が、読者にカウンセリングを疑似体験するような感覚を与える。
著者の感情や思考の詳細な言語化が、読者自身の感情をより深く理解する手助けとなる。
カウンセラーの寄り添う姿勢やアプローチが、読者に安心感を与えている。
◉感情の言語化
「死にたい」という感情を別の言葉(例:「帰りたい」「書きたい」)で表現することが、読者に新たな視点を与える。
感情を言語化することで、その根源にあるものに気づき、自己理解を深めることができる。
感情を言葉にすることで、気持ちが整理され、救われるという経験が共有されている。
◉生きづらさへの寄り添い
生きづらさを感じている人や苦しんでいる人に寄り添う作品として評価されている。
著者の苦悩のありのままの描写が、読者に共感と孤独ではないという感覚を与える。
「お守り」のような存在になると感じている読者もいる。
◉認知行動療法とマザーリング
カウンセリングで紹介された「認知行動療法」や「マザーリング」といった具体的な手法が、読者にとって役立つ情報として捉えられている。
特に「マザーリング」は、自分の感情を受け入れることの重要性を教えてくれると評価されている。
◉自己受容
ネガティブな感情を持つ自分自身を受け入れることができるようになったという読者の声が多い。
ポジティブ思考を強要するのではなく、ネガティブな感情も抱えながら生きていくことを肯定してくれる点が、多くの読者にとって救いになっている。
◉多様な解釈
読者の解釈は多岐にわたる。
自身の出自の葛藤や理想の母親像を求める気持ちと重ねて読んでいる人もいる。
著者と同じように「帰りたい」という感情を持つ人もおり、それぞれの経験や感情と照らし合わせながら読んでいることがわかる。
◉本の力
本を読むことで、不安が和らいだり、気持ちが少し楽になったりするといった体験が共有されている。
本との出会いは縁やタイミングであるという意見もあり、この本もまた、必要な時に出会うべくして出会った本であると感じている読者がいる。
総じて、「死ぬまで生きる日記」は、多くの読者にとって、共感、自己理解、そして心の癒しをもたらす作品として評価されています。著者の正直な言葉と、カウンセリングを通して変化していく姿が、読者の心に深く響いていると言えるでしょう。