「わかりあえない」を越える――目の前のつながりから、共に未来をつくるコミュニケーション・NVC
マーシャル・B・ローゼンバーグ (著)
出版社 : 海士の風
発売日 : 2021/12/8
言語 : 日本語
単行本(ソフトカバー) : 272ページ
対話への勇気がわいてくる
家族とのささいな揉め事でも、集団同士の深刻な対立でも、
自分と相手の「奥にある大切にしているもの」に寄り添うことで、
新たな選択肢をつくりだす。
世界各地の個人・組織・社会で広がる新しいアプローチ「NVC」
対立に満ちた社会で分断された人々の心をつないできた著者が、
その実践のエッセンスを豊富な事例とともに描き出す。
(訳者まえがきより一部をご紹介します)
本書の著者であるマーシャル・B・ローゼンバーグが、NVC(非暴力コミュニケーション)を形にしたのは1970年代のことでした(NVCを学ぶ人は彼のことを親しみを込めて「マーシャル」と呼んでいます)。
マーシャルは幼い頃から、他者に対する非難や批判だけでなく、もっと暴力的な行動に向かう人たちがいる一方で、おもいやりをもって与えあうことを喜びとする人たちがいることに気づきます。
その体験から「人とはどんな存在なのか」という問いを探究するようになりました。そして、私たちが日々使う「言葉」が、自分自身や相手・世界の捉え方に影響を及ぼしていることに注目し、NVCを考案します。
私たちが暴力的な言動をとる背景には「何が正しく、何が間違っているか」という捉え方があると、マーシャルは指摘します。「間違っているものは正されるべき」という考えが暴力を正当化し、それが言動に表れるというのです。
この考えは他者にのみならず、自分自身にも及びます。「自分はもっとこうすべきだったのに」「なぜ自分はこんなこともできないのか」と自分を攻撃する心の声を、誰もが聞いたことがあるのではないでしょうか。自分の至らなさを埋めるためにさまざまな行動を起こすけれど、内面が満たされることがなく、果てには消耗してしまう。そんな人も少なくないのではないかと思います。多くのものを手に入れても、内面がどこか満たされない。
マーシャルがNVCを通じて提供しているのは、このような捉え方をがらりと変えるまなざしです。「自分の内面で何が息づいているか(What's alive in me)」に意識を向けると、そこから自分や相手とつながりをつくることができる、という視点です。
私たちの言動の源には、自分自身のいのちが満たそうとしている大切なもの(ニーズ)がある、とマーシャルは伝えています。私たちが心地よいと感じる(つまり快の感情をいだいている)ときは、ニーズが満たされている状態です。一方で、不快の感情をいだいているときは、何らかのニーズが満たされていない状態です。あらゆる感情は、いのちが何を欲しているのかを知るための重要な手がかりだというのです。
人生を豊かにするために大切なものは、自分の内面に意識を向けることによって気づくことができる。自分自身に耳を傾け、寄り添うことによって、人は本当の智慧と強さを思い出すことができる。この画期的な視点に、私たちはそれまで捉えていた世界観ががらりと変わるほどの衝撃を受けました。
……
NVCは今、世界中のさまざまな現場で、さまざまな人たちの個性が活かされながら実践され、伝えられています。本書を通じてNVCを生み出したマーシャルの想いに触れることで、みなさんの試みがより豊かなものになることを願っています。
著者について
マーシャル・B・ローゼンバーグ Marshall B. Rosenberg
NVC(Nonviolent Communication)の提唱者であり、国際的な平和推進組織CNVC(Center for Nonviolent Communication)の設立者。年間250日以上をかけて世界中を飛びまわり、数百におよぶ地域コミュニティー、国際会議、戦争で疲弊した地域などでNVCを伝える活動を精力的に続けてきた。
「暴力に代わる平和的な選択肢」を提供する新しいコミュニケーション手法に強い関心を抱きながら、治安の悪かったデトロイト近郊で育つ。カール・ロジャーズのもとで研究をおこない、1961年ウィスコンシン大学で臨床心理学の博士号を取得。その後の人生経験と比較宗教研究を通じて、本書のテーマである「NVCのプロセス」を開発。連邦政府から受託した学校教育プロジェクトで、NVCを用いた「ミディエーションとコミュニケーションのトレーニング」をおこなうなどの実践を経て、1984年CNVCを設立。現在、世界35カ国で180名以上のCNVC公認トレーナーが活動している。
アメリカ・ニューメキシコ州アルバカーキ在住。ギターやパペットを手に、世界の紛争地帯を旅したときの体験を語りながら、「より平和で満たされた世界をつくりだすための方法」を精力的に説く。著書に、『NVC―人と人との関係にいのちを吹き込む法』(日本経済新聞出版)など。Bridge of Peace Award 2006 (Global Village Foundation)など受賞多数。