夢の家
魚住 陽子 (著)
2021年8月に急逝した作家、魚住陽子が遺した作品から、6編を収録。
静謐でありながら、自らの感情に向き合う強さを感じさせる珠玉の短編集。
【目次】
・物置に蝶が来ている
・萌木色のノート
・夢の家
・シェード
・郭公の家
・旅装
・あとがき(加藤 閑)
出版社からのコメント
『奇術師の家』や『水の出会う場所』『菜飯屋春秋』など、独自の世界観をもつ作家として知られ、2021年8月に急逝した作家、魚住陽子。彼女が遺した作品から、6編を収録した短編集です。
画家の女性と彼女がかつて共に暮らした男性との愛憎を互いの心情描写で綴る表題作「夢の家」、家族を喪った一人暮らしの中年女性と彼女が関わる整体院を中心に、彼女を取り巻く人間模様を描く「シェード」、往復書簡というかたちでの師弟ふたりのやりとりによってそれぞれの感情や生活の変化を描く「郭公の家」、そして、作者の母校の創立記念の冊子に収録されていた、女子高生たちの日常のやりとりをいきいきと描いた「物置に蝶が来ている」、その他2編を加えた全6編を収録。
静謐でありながら、その奥に潜む生々しい感情(後悔、諦め、憎しみ、愛、失望、希望など)をしっかりと見つめ、自らに向き合う強さを感じる作品群は、作者独自の世界観にあふれています。また、病を抱えながら暮らし、創作を続けてきた作者ならではの死と生についての鋭敏な感覚も、そこここに散見され、はっとさせられるものがあります。
作者が晩年取り組んでいた俳句のエッセンスやどの作品にも登場するたくさんの草花、そして何気ない生活風景の描写にも魚住ワールドともいうべき美意識が感じられる短編集。ファンの方はもちろん、足を踏み入れたことのない方にもぜひこの世界観に触れていただきたい一冊です。
著者について
魚住 陽子(うおずみ・ようこ)
1951年、埼玉県生まれ。埼玉県立小川高校札業後、書店や出版社勤務を経て作家に。
1989年「静かな家」で第101回芥川賞候補。1990年「奇術師の家」で第1回朝日新人文学賞受賞。1991年「別々の皿」で第105回芥川賞候補など。
2000年頃から俳句を作り、『俳壇』などに作品を発表。2004年、腎臓移植後、2006年に個人誌『花眼』を発行。
著書に『奇術師の家』(朝日新聞社)、『雪の絵』、『公園』、『動く箱』(新潮社)、『水の出会う場所』、『菜飯屋春秋』(ともに駒草出版)がある。
2021年8月に腎不全のため死去。
出版社 : 駒草出版 (2022/6/29)
発売日 : 2022/6/29
言語 : 日本語
単行本 : 272ページ