彼女たちのまなざし 日本映画の女性作家

北村匡平 (著), 児玉美月 (著)

女性映画作家たちのまなざしからよみとく日本映画の最前線。

“「映画監督」と呼ばれる人々が一人残らず女性であったなら、当然そこに「女性監督」という呼称は生まれえない。かつて映画監督には、男性しかいないとされていた時代があった。”(「序論」より)
そのような時代は果たして本当の意味で「過去」となりえているのだろうか?
本書は、この問題提起を出発点として、日本映画における女性作家の功績を正当に取り上げ、歴史的な視座を交えながらその系譜をたどり、彼女たちのまなざしから日本映画の過去・現在・未来を読み替えていくことを試みる、これまでにない映画批評である。

対象をあえて女性のみに限定し、大勢の男性作家たちのなかにいる数少ない女性作家という図式をまずはいったん解体することから始めるというアプローチから、これまでの日本映画の歴史にひそむ性の不平等や権力の不均衡の問題にせまり、日本映画史の捉え直しを通して、新しい地図を描き出す。
伝統的な家父長制から脱却し、多様な属性とオルタナティヴな関係性を個々人が模索する2020年代以降の時代精神から読みとく、日本映画の最前線。

取り上げる主な作家
西川美和、荻上直子、タナダユキ、河瀨直美、三島有紀子、山田尚子、瀬田なつき、蜷川実花、山戸結希、中川奈月、大九明子、小森はるか、清原惟、風間志織、浜野佐知、田中絹代……ほか多数

論考から作品ガイドまで、全原稿書き下ろし
作家ごとの評論だけでなく、日本映画史における女性監督の系譜、次世代の新進作家紹介、今見るべき日本の女性監督作品の100本ガイドまで。作家論、歴史、状況論、作品ガイドまでを網羅した、著者渾身の書き下ろし。

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◎目次
序論 児玉美月

第1章 日本映画における女性監督の歴史 北村匡平
1 女性監督のパイオニア/2 胎動期──1950〜1980年代/3 黎明期──1990年代/4 ニューウェーヴ──2000年代/5 黄金期──2010年代以降

第2章 16人の作家が照らす映画の現在地 北村匡平+児玉美月
1 西川美和論──虚実、あるいは人間の多面性
2 荻上直子論──「癒し系」に「波紋」を起こすまで
3 タナダユキ論──重力に抗う軽やかさ
4 河瀨直美論──喪失と再生を描く私映画
5 三島有紀子論──陰翳の閉塞空間とスクリーン
6 山田尚子論──彼女たちの空気感と日常性
7 瀬田なつき論──どこにもない「時間」を生きる
8 蜷川実花論──恋と革命に捧げられた虚構の色彩
9 山戸結希論──すべての「女の子」たちへ
10 中川奈月論──世界の崩壊/解放と階段のサスペンス
11 大九明子論──意外と「だいじょうぶ」な女たち
12 小森はるか論──記録運動としての積層と霊媒
13 清原惟論──マルチバースで交感する女性身体
14 風間志織論──日常の細部を照らし出すフィルム
15 浜野佐知論──男根的要請とフェミニズム的欲望の闘争
16 田中絹代論──欲望する身体とセクシュアリティ

第3章 次世代の作家たち 児玉美月
「映画」が孕む暴力性への自覚/日本の社会問題と向き合う/独自の作家性を貫く/学園映画の異性愛規範に抗する/オルタナティヴな関係性を模索する/新たな属性を可視化させる/まだ見ぬ未来へのシスターフッド

〈付録〉女性映画作家作品ガイド100 児玉美月+北村匡平

あとがき 北村匡平

著者について
北村匡平(きたむら・きょうへい)
映画研究者/批評家。東京工業大学リベラルアーツ研究教育院准教授。単著に『椎名林檎論——乱調の音楽』(文藝春秋、2022年)、『アクター・ジェンダー・イメージズ——転覆の身振り』(青土社、2021年)、『24フレームの映画学——映像表現を解体する』(晃洋書房、2021年)、『美と破壊の女優 京マチ子』(筑摩書房、2019年)、『スター女優の文化社会学——戦後日本が欲望した聖女と魔女』(作品社、2017年)、共編著に『川島雄三は二度生まれる』(水声社、2018年)、『リメイク映画の創造力』(水声社、2017年)、翻訳書にポール・アンドラ『黒澤明の羅生門——フィルムに籠めた告白と鎮魂』(新潮社、2019年)などがある。

児玉美月(こだま・みづき)
映画文筆家。共著に『反=恋愛映画論——『花束みたいな恋をした』からホン・サンスまで』(ele-king books、2022年)、『「百合映画」完全ガイド』(星海社新書、2020年)、分担執筆に『ロウ・イエ 作家主義』(A PEOPLE、2023年)、『デヴィッド・クローネンバーグ 進化と倒錯のメタフィジックス』(ele-king books、2023年)、『フィルムメーカーズ24 ホン・サンス』(宮帯出版社、2023年)、『ジャン=リュック・ゴダールの革命』(ele-king books、2023年)、『韓国女性映画 わたしたちの物語』(河出書房新社、2022年)、『アニエス・ヴァルダ——愛と記憶のシネアスト (ドキュメンタリー叢書)』(neoneo編集室、2021年)、『岩井俊二 『Love Letter』から『ラストレター』、そして『チィファの手紙』へ』(河出書房新社、2020年)、『フィルムメーカーズ21 ジャン=リュック・ゴダール』(宮帯出版社、2020年)など多数。『朝日新聞』、『キネマ旬報』、『文藝』、『ユリイカ』、『文學界』などに寄稿。

児玉美月
映画文筆家。映画を中心にさまざまな媒体で執筆活動を行う。共著に『彼女たちのまなざし——日本映画の女性作家』(フィルムアート社、2023年)、『反=恋愛映画論』(ele-king books、2022年)、『「百合映画」完全ガイド』(星海社新書、2020年)、分担執筆に『ロウ・イエ 作家主義』(A PEOPLE、2023年)、『われらはすでに共にある: 反トランス差別ブックレット』(現代書館、2023年)、『デヴィッド・クローネンバーグ 進化と倒錯のメタフィジックス』(ele-king books、2023年)、『フィルムメーカーズ24 ホン・サンス』(宮帯出版社、2023年)、『ダリオ・アルジェント——『サスペリアの衝撃』』(ele-king books、2023年)、『ジャン=リュック・ゴダールの革命』(ele-king books、2023年)、『韓国女性映画 わたしたちの物語』(河出書房新社、2022年)、『サム・ライミのすべて——『ドクター・ストレンジ/マルチバース・オブ・マッドネス』への軌跡』(Pヴァイン、2022年)、『アニエス・ヴァルダ——愛と記憶のシネアスト (ドキュメンタリー叢書)』(neoneo編集室、2021年)、『ジョージ・A・ロメロの世界——映画史を変えたゾンビという発明』(ele-king books、2021年)、『岩井俊二 『Love Letter』から『ラストレター』、そして『チィファの手紙』へ』(河出書房新社、2020年)、『フィルムメーカーズ21 ジャン=リュック・ゴダール』(宮帯出版社、2020年)がある。寄稿先に『文學界』、『文藝』、『群像』、『朝日新聞』、『SFマガジン』、『同朋』、『キネマ旬報』、『週刊読書人』、『ユリイカ』、『週刊文春CINEMA!』、『BRUTUS』、『CREA』、『SCREEN』、『Pen』、『GQジャパン』、『25ans』など多数。【写真:SANG-HUN LEE】

出版社 ‏ : ‎ フィルムアート社
発売日 ‏ : ‎ 2023/12/26
単行本(ソフトカバー) ‏ : ‎ 356ページ

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